『OK Computer』に収録されたアルペジオが印象的な人気曲。
3本のギターが奏でる美しいハーモニーは20年経っても色褪せない。
エドがメインメロディを担当する曲としても有名。
【歌詞】
Transport, motorways and tramlines
Starting and then stopping
Taking off and landing
The emptiest of feelings
Disappointed people, clinging on to bottles
When it comes it's so, so, disappointing
Let down and hanging around
Crushed like a bug in the ground
Let down and hanging around
Shell smashed, juices flowing
Wings twitch, legs are going
Don't get sentimental, it always ends up drivel
One day, I am gonna grow wings
A chemical reaction
Hysterical and useless
Hysterical and
Let down and hanging around
Crushed like a bug in the ground
Let down and hanging around
Let down
Let down
Let down
You know, you know where you are with
You know where you are with
Floor collapsing, falling
Bouncing back and one day, I am gonna grow wings
A chemical reaction (you know where you are)
Hysterical and useless (you know where you are)
Hysterical and (you know where you are)
Let down and hanging around
Crushed like a bug in the ground
Let down and hanging around
【日本語訳】
輸送機関、高速道路、電車の線路
走り出し、そして止まる
空を飛んで、着陸する
感情をなくした世界
失望した人々、気力にべったりとこびりついている
何かがやってきても
それは決まってがっかりすることだ
失望して這いまわってる
踏み潰された虫みたいに
失望して這いまわってる
砲弾がぶつかって、血が流れる
翼をぴくぴく動かしながら、足は前に進もうとする
感情的にならないでね、どうせたわいもない話で終わるんだから
ある日、僕に翼が生える
そんな化学反応
ひどくおかしいよ、そして何の役にも立たない
ひどくおかしいよ、そして...
失望して這いまわってる
踏み潰された虫みたいに
失望して這いまわってる
失望して...
失望して...
失望して...
君は知っている。君は君がどこにいるかわかっている。
君は君がどこにいるかわかっている。
床が崩れ落ちて、落下して
跳ね返って、そしてある日、僕に翼が生える
そんな化学反応(君は君の居場所を知っている)
ひどくおかしいよ、そして何の役にも立たない(君は君の居場所を知っている)
ひどくおかしいよ(君は君の居場所を知っている)
失望して這いまわってる
踏み潰された虫みたいに
失望して這いまわってる
【解説】
『OK Computer』というアルバムの、世紀末の世の中を象徴するような楽曲となっています。歌詞の中のモノクロな情景と、豊かな色彩を感じさせる美しいアルペジオの対比が印象的です。
閉塞感のかたまりのような時代
曲の冒頭は、すべてのものが目まぐるしく移動している風景から始まります。そこに人々の笑顔はなく、みなうつむきながら生活しています。感情も立ち上がる気力もなくしています(※)
※ここには1997年当時のRadioheadの境遇が影響していると言われています。彼らはライブツアーのため世界を飛行機や電車、バスなどで途方もない期間、移動を繰り返していました。その窓から見える人々は、彼らにはそのように見えたのです。
20世紀末は彼らにとって、そんな閉塞感のかたまりのような時代でした。
「なんで世の中はこんなになってしまったんだ?」
そんな素朴な疑問を、ありのままの世界を切り取ることで表現したのです。
「君は君の居場所を知っている」
この悲壮感あふれる描写は、曲の中盤に差し掛かる頃に変化を迎えます。
3本のギターによるアルペジオが収束し、穏やかな音色に包まれる頃、次の印象的なコーラスが現れるのです。
君は君の居場所を知っている
スピーカーの片側からささやくように、私たちに語りかけるように、トムが叫び始めます。
ここから曲の終わりにかけて、3本アルペジオと、3方向からのコーラスが奇跡的なバランスでメロディを織り成していきます。
コーラスはそれぞれ以下の役割を果たしています。
- 右側……トムの魂の叫び
- 左側……失望にひしがれた心の声
- センター……世の流れ/客観的な理性
はじめに「魂の叫び」が盛り上がりを見せ、私たちに希望を与えてくれますが、やはり心は立ち上がる気力を失っており、最後に大きな流れに飲み込まれふと消えてしまいます。
このプロットは前アルバムの『fake plastic tree』に見られた表現ですので、あわせて聴くとより深読みできるかと思います。
この歌には希望はありませんが、それ以上にシニカルな思想がみてとれます。それは、こんな世界ではあえて希望を持つ必要なんてないという「達観」の視点です。(仏教的に言えば「諦め」による逆説的な自己肯定です)
1997年当時の彼らにとっては、この世界をどうこうしてやろうとはまだ考えてもいなかったのでしょう。ただ、こんなくだらない社会のせいで自分たちが苦しむのも認められるものではない。それが
僕は僕の居場所を知っている
というささやかな抵抗として表現されたのです。『Creep』で見せた「ぼくはここにいない」という弱い心とは正反対の力強さがあります。このアルバムが出る頃からあの歌を封印し始めたのは、こういった心情の変化があったからかもしれませんね。
そして21世紀。
技術の発達により、物の移動はさらに加速度的に早まりました。取り残される人々も増えていくでしょう。これらが疎外感となって再燃するのか。それとも技術自身が人々を救うのか。
この曲を聴くとき、そんな問いがふと浮かぶのです。