レディオヘッドのトム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッドによる新バンド - The Smileのデビューシングル「You Will Never Work In Television Again」の和訳と解説。
レディオヘッドのアート性から一転、ミニマルなディストーションギターによるポスト・パンク回帰を思わせる一曲。
和訳
怖がることはない あいつはただの 太ったミスト野郎さ
若者は侮蔑して 可愛子ちゃんたちは 手首に切り込みを入れて
キスのために カーテンの前に並ばされて (下手くそな歌でさ)
どこか岩の陰で そこら橋の下で
裏社会の奴らが ご機嫌で約束を交わす
(いいじゃんか よく眠れよ 一晩中さ)
そこかしこのキッズ 金の鎖に縛られて 2本のつるつるのロープでさ
脱ぎ捨てられた服 拾われずおいてけぼり 俺の左足だってそう
明かりを落とせよ さあ "ブンガ・ブンガ"(※1) さもないと
お前は二度と テレビの仕事ができなくなるぜ
(いいじゃんよ)
あいつは (可愛子ちゃんたちを)噛みしだいて そして 吐き捨てる
なんとかっていう男だ その悪霊は
機械的に 機械的に
そうして すべてのうら若い希望と夢は
むさぼり食われちまう あいつの邪悪な目と 豚みたいな手で
哀れなクソ野郎 お前にとっちゃ取るに足らない話だろうがよ
そのうす汚れた手をどけろ 俺の彼女からよ
神はお前がどこで 何してたか知ってるんだぜ
神はお前がどこで 何してたか知ってるんだぜ
神はお前がどこで 何してたか知ってるんだぜ
神はお前がどこで 何してたか知ってるんだぜ
神はお前がどこで 何してたか知ってるんだぜ
※1 ... ブンガブンガ (英語: Bunga bunga) とは(中略)2010年には当時のイタリア首相シルヴィオ・ベルルスコーニのセックスパーティを指す言葉として有名になった単語である。イタリアでの事件は大きな政治スキャンダルとなり、この言葉は世界的に報道で使用された(出典:Wikipedia)
歌詞
Fear not my love, he's a fat fucking mist
Young bones spat out, girls slitting their wrists
Curtain calling for the kiss, from the nursery rhyme
Behind some rocks, underneath some bridge
Some gangster troll promising the moon
Yeah right
Sleep tight
All night
Some kid, in golden chains, two slippery ropes
A lonely stitch, left to be unpicked, including my left foot
Let the lights down low, bunga bunga or
You'll never work in television again
Yeah right
He chews 'em up, he spits 'em out
It's whatshisname, the gеnie man
Mechanical, mechanical
All thosе beautiful young hopes and dreams
Devoured by those evil eyes and those piggy limbs
You sad fuck, you throw small change
Take your dirty hands off my love
Heaven knows where else you've been
Heaven knows where else you've been
Heaven knows where else you've been
Heaven knows where else you've been
Heaven knows where else you've been
解説
サビも展開もあったもんじゃない、怒りを歌詞に載せるためだけに作ったんじゃないかとすら思える一曲です。
「お前は二度とテレビの仕事ができなくなる」
この曲のテーマは「若者の搾取」だと思われます。とりわけ、高い地位にいる人間が、権力をちらつかせて若者を「He chews 'em up, he spits 'em out(吸い尽くして吐き捨て)」ている状況への怒りなのです。
曲のタイトルである「お前は二度とテレビの仕事ができなくなるぜ」は、権力者たちの言葉だったのですね。この言葉は、彼らが未来ある若者(俳優、女優、テレビ関係者)を脅して、自由を奪い(金の鎖で縛って)、非道な行為を強要するときの常套句なのです。「俺に逆らっていいのか? 仕事が回ってこなくなるぜ?」と。
数年前に「#MeToo」運動が巻き起こりましたよね。ハリウッドでも、イギリス本国でも、ここ日本でも(特に暴力団と芸能事務所の闇)、それは私達に見えないだけで、水面下で、いまも繰り広げられている事実なのです。「#MeToo」運動が下火になってきているいまだからこそ、誰かが声を上げなければいけない。そういった想いが、この曲の背景にあるように感じます。
ハリウッドで働く女性の94%がセクハラ被害を経験|ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)公式
翼を得たトムの新しい表現
レディオヘッドで見せてくれた婉曲表現も比喩もこの曲にはありません。むしろ怒りを隠すことなく、直接的な言葉で非難を浴びせることにこそ主眼が置かれているようです。あたかも、もう誰かに気を遣うこともないと言わんばかりに、赤裸々に感情を表現してくれています。
レディオヘッドという重い殻を脱ぎ捨て、さらにツアーからもアルバム制作からも離れ、この5年間でトムの心境に大きな変化があったのは間違いないようです。The Smileのアルバムも発表が近いようですし、どのようなコンセプトに仕上がるのか、本当に楽しみですね!
それにしても、これほどトップスターに上り詰めても、弱いものに寄り添う姿勢。己の信じる正しさを絶対に曲げない姿勢には本当に頭が下がります。これがトムの魅力ですよね。
豆知識
2003年のレディオヘッドのアルバム『Hail to the Thief』の「We Suck Young Blood(若者の血をすする)」という曲も似たテーマで描かれていましたね。あわせて聞くと、より深読みできるかも。