The Smile「A Light For Attracting Attention」の中核をなす優美なバラード。
「Speech Bubbles」の日本語訳です。かつてRadiohead時代にもこれほど美しい曲はあったでしょうか。
【歌詞】
We run for the hills
We run like fools
Our city's a-flame
The bells ringing
The bells ringing
Devastation has come
Left in a station with a note upon
Now there's never any place
Never any place to put my feet back down
No, there's never anywhere
The scene is rolled away, lights are taken down
On a newspaper stand
Any feeble branch to put my weight upon
But I lie to myself
Anywhere I dare to put my feet back down
Who'll find a cab in the pouring rain?
Who'll find a vein to put the needle in?
Who hears that voice that's like bells ringing?
How will I know you?
How will I know you?
How will I know you?
【和訳】
ぼくらは 丘に向かって走る
馬鹿みたいに 走るんだ
ぼくらの街が 燃えている
鐘が 鳴り響いている
鐘が 鳴り響いている
破滅がやってきたんだ
書き置きを手に 駅に取り残された
もう どこにも居場所はない
どんな場所にも ぼくが踏み入ることはない
そう 本当にないんだ
そのシーンは巻き取られた 明かりは落とされた
街角の売店で
どんなにか弱い枝にだって 体を預けることができる
でもぼくは 自分に嘘をついた
どこにだって 望めば踏み入れることができるって
もう誰が 雨の中でタクシーを見つけるのだろう?
もう誰が 針を刺す静脈を見つけるだろう?
誰が 鐘の音のような声を聞けるだろう?
どうしたら 君を知ることができる?
どうしたら 君を知ることができる?
どうしたら 君を知ることができる?
【解説】
美しい旋律からは想像できないほど、歌詞は物悲しい内容になっています。
「Speech Bubbles(スピーチ・バブル)」とは、「吹き出し」のことです。マンガの吹き出しなどが思い浮かびますが、私はなんとなくメッセージアプリのトークのようなものを想像しました。
画面の中で止まってしまったSpeech Bubbles。返ってくることのない返信。
あまり現在に言及した解説はしたくないのですが、やはり私の頭にはウクライナ侵攻が浮かんできてしまいます。
もう誰が 雨の中でタクシーを見つけるのだろう?
もう誰が 針を刺す静脈を見つけるだろう?
誰が 鐘の音のような声を聞けるだろう?
この3行はトムがきっと一番頭を悩ませた部分だと思います。
だって、たった3行で「平穏な日常」を表さなければならないのですから。こんな当たり前の日常が、ある日突然失われてしまう。いままさに、地球のある場所で、現実にそんな日が来てしまった(Devastation has come)。そのような悲しみを唄っているのです。
ただ、トムはおそらくこの曲にも、どんな時代にも通じる意味を持たせたいと考えているはずです。自分の居場所を失う悲しみは、極めて普遍的なものです。私は、そのような感情の象徴として、この曲をそばに置いておきたいと思います。