深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Jigsaw Falling Into Place / Radiohead - ジグソーパズルがぴたりとはまる

Radioheadの「Jigsaw Falling Into Place」の和訳、解説です。
この楽曲はレディオヘッドがEMI(傘下のParlophone)から独立後、初めて発表したシングル。
7作目のアルバム『In Rainbows』に収録。

【歌詞】

Just as you take my hand
Just as you write my number down
Just as the drinks arrive
Just as they play your favourite song
As your bad day disappears
No longer wound up like a spring
Before you had too much
Come back in focus again
The walls abandon shape
They've got a Cheshire cat grin
All blurring into one
This place is on a mission
Before the night owl
Before the animal noises
Closed circuit cameras
Before you're comatose

Before you run away from me
Before you're lost between the notes
The beat goes 'round and 'round
The beat goes 'round and 'round
I never really got there
I just pretended that I had
Words are blunt instruments
Words are sawn-off shotguns
Come on and let it out
Come on and let it out
Come on and let it out
Come on and let it out
Before you run away from me
Before you're lost between the notes
Just as you take the mic
Just as you dance, dance, dance

Jigsaw falling into place
So there is nothing to explain
You eye each other as you pass
She looks back, you look back
Not just once, not just twice
Wish away the nightmare
Wish away the nightmare
You've got the light, you can feel it on your back
A light, you can feel it on your back
Your jigsaw falling into place

 

【和訳】

君がぼくの手をとり
君がぼくの電話番号を書き留めるとき
ドリンクが運ばれてきて
君のお気に入りの歌が流れるとき
君の嫌なことはふいに消え
もうキリキリと締め上げられることはない
あれこれ抱えこまないうちに
焦点をあわせ直すんだ
壁が形を失い
みなチェシャ猫の笑みを浮かべてる
もやがひとつに溶け合い
この場所が任務となる
夜の人間が 出てくる前に
動物たちが 騒ぎ出す前に
店内の監視カメラ
君が昏睡状態になる前に

君が僕から去る前に
君が音符の隙間に迷い込む前に
ビートがあたりを回っている
ビートがあたりを回っている
僕がそこにたどり着くことはない
僕はそんなフリをしてただけ
言葉は鈍器
言葉は短身ショットガン
ここにきて 吐き出せ
ここにきて 吐き出せ
ここにきて 吐き出せ
ここにきて 吐き出せ
君がぼくから去る前に
君が音符の隙間に迷い込む前に
君がマイクを手にしてる間に
君が踊っている間に… 踊って...踊って...

ジグソーパズルがぴたりとはまる
説明することは もう何もない
すれ違いざまに 目が合う
彼女は振り返る キミは振り返る
一回だけじゃない 二回だけじゃない
悪夢を遠ざけるんだ
悪夢を遠ざけるんだ
キミは光を得た それを背中に感じるだろ
光を キミは背中に感じるだろ
キミのジグソーパズルがぴたりとはまる

 

【解説】

「Jigsaw Falling Into」はクリーンなギターが印象的な、疾走感あふれるロックナンバー。地を這うようなメロディは次第に周囲を巻き込み、混沌の渦に飛び込んでいく...。

リリース初週の全英シングルチャートは30位。1995年以来最も低い順位でしたが、Time誌が選ぶ「2007年ベストソング」では第5位に選出されました。

夜の街で繰り広げられる情事

歌詞についてトムは、NMEのインタビューでこのように解説しています。

「Jigsaw Falling Into」は個人的なことを歌ったものじゃないんだ。これは観察したものをベースにしててね。ぼくが昔オックスフォードの中心部に住んでいた頃、時々見かけた、週末のクソみたいなカオスが元になってるんだ。でもまあこの曲は、いろんな違った体験についての曲でもあるけど。

(中略)

歌詞はかなり辛辣だよね。「昏睡状態になる前に」とか、記憶を失うまで飲んでめちゃくちゃになる、とかさ。君がそんな連中の中にいたら、それはある種の高揚感でもあるけど...でももっとダークな面もあるよね。

引用)NME, december 8th 2007

 

「Jigsaw Falling Into Place」深読みポイント

この楽曲は3部構成になっています。

第1部 Just as you take my hand〜

男女がカウンターで語り合う場面から始まります。最初は店内の景色が明確に描かれていますが、アルコールのせいでしょうか、次第に描写が怪しくなってきます。

第2部 Before you run away from me〜

意識が内に向き、景色の描写は失われます。代わりに音と言葉に集中しているようです。目の前の相手を自分のものにしたい、そんな欲望の現れから来るものだと解釈されます。

第3部 Jigsaw falling into place〜

どこか雰囲気がおかしい。いままで「you」と「me」だった表現が一転、「she」と「you」になっているんですね。なぜか視点が、二人の関係を外から眺める、第三者の視点に切り替わっているんです。

間奏の間に、何かが起きたのです。きっとそれは決定的なすれ違いだったのでしょう。「Jigsaw falling into place(ジグソーパズルがぴたりとはまる=すべてがわかってしまった)」というのはそういうことなのです。

そして主人公は、後悔の念に苛まれながら、それを振り払おうとしています。

悪夢を遠ざけるんだ
キミは光を得た それを背中に感じるだろ

第三者の視点で、自分(キミ)に「前を向くんだ」と力づけているわけです。

もともと彼女は自分に気がなかったのか、それとも性行為が二人の関係を決定的に損なわせたのか・・・。男女の関係ですもの、いろいろな解釈がありそうですね。

ただ一つ言えるのは、この曲の独特の不安定感は、楽曲の盛り上がりと反比例する形で、歌詞が高揚感から喪失感へと沈み込んでいく、その対比の構図から生まれるものだということです。

筆が乗ったときのトム・ヨークのセンスは、本当に天才的ですね・・!