深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radiohead・トム・ヨーク・The Smileの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞和訳】Zero Sum / The Smile - Windows95が提供される世界

The Smile『Cutouts』の先行シングル「Zero Sum」(ゼロ・サム)の和訳・解説。ジョニーの破天荒なギターアルペジオが印象的。

【歌詞】

Zero sum, moot point
A cut out trying to fill the void
A shit grin, a performance
A tipping point, loose bannister
The physical lines of forced thought
That's a lot to burn for no reason
A gas leak
I’m falling through the ice
A vacant lot to buy, vacant lot to buy
A clipped tongue acting dumb
Somewhere in the past in a re-run
Thinking all the ways
The system will provide
Windows 95, Windows 95

So over confident, confident, confident
So over confident, confident, confident
That's another red flag, red flag
That's another red flag, red flag

The MasterClass
The TED Talk
That’s a lot to burn for no reason
Think of all the ways
The systems will provide
Windows 95, Windows 95

Listen close
Listen carefully
You will hear that the birds are in the wrong place
Fortunately there
The system will provide
Windows 95, Windows 95

So over confident, confident, confident
So over confident, confident, confident
That's another red flag, red flag
That's another red flag, red flag

【和訳】

ゼロ・サム 論ずべき点
切り抜きで空白を埋めて
ニヤケ顔 パフォーマンス
転換点 ゆるんだ手すり
強制思考の物理行
理由もなく燃えることだってある
ガス漏れ
氷が割れてぼくは落ちていく
買える空き地 空き地
早口な舌は無口を演じる
どこか 再放送の過去で
ずっと考えながら
システムは提供する
Windows95を Windows95を

そんな 自信過剰な 自信 自信
そんな 自信過剰な 自信 自信
それも 赤い旗 赤い旗
それも 赤い旗 赤い旗

マスタークラス
TEDトーク
理由もなく燃えることだってある
あらゆる方法を考えて
システムは提供する
Windows95を Windows95を

近づいて
注意深く聞いて
鳥たちが間違った場所にいるって聞くんだろ
幸いにしてそこでは
システムが提供する
Windows95を Windows95を

そんな 自信過剰な 自信 自信
そんな 自信過剰な 自信 自信
それも 赤い旗 赤い旗
それも 赤い旗 赤い旗

【用語解説】

Zero sum
誰かが得ると誰かが失う状況を指す経済用語。全体のトータルが必ずゼロになるためゼロサムという。

The physical lines of forced thought
「物理行」とは画面の折り返しの都合でできる、見かけ上の行を指すコンピュータ用語。「強制思考の」というフレーズと合わせて、「特定の制約下でしか物事を考えられない状況」を表していると思われる。(参考:物理行と論理行

Windows95
1995年に発売されたMicrosoftの伝説的OS。当時マイナーだったインターネットが一般家庭に普及する立役者となった。現代のインターネット社会はこのOSから始まったと言っても過言ではない。

Red flag
赤い旗。危険を伝えるために振るもの。危険信号。

MasterClass / TED Talk
いずれも高名な人物が自らの知識・体験を大衆に伝えるWeb上のメディア

(外部サイト:MasterClass / TED Talks

【感想】

いやー素晴らしいですね。『Wall Of Eyes』で少し落ち着いちゃったかなと思ったところでこの曲ですよ。Radiohead・The Smileを通して、トリップ系ギターソングとしては最高傑作じゃないですか?

PVもぶっ飛んでていいですよね。最初は一般人が歩いているだけだったのに、突如怪人(ヴィラン?)に変貌したかと思うと、数が増えて暴走し続ける。これは何かを暗示してるんですよ、きっとね。

そういえば、この楽曲に先駆けて発表された「Don't Get Me Started」では「I'm not the villain(俺はヴィランじゃない)」という一節もありましたね。歌詞和訳もあるのでぜひ見てみてください。

【ひとこと解説】

表題の「Zero Sum(ゼロ・サム)」というのは経済用語です。よく「ゼロサムゲーム」などとして使われ、誰かが得ると誰かが失う状況を指す言葉です。「パイの奪い合い」や、「誰かの幸せは、誰かの不幸の上に成り立つ」みたいなイメージですね。

また、Windows95がやたらフィーチャーされてますね。事前のプロモーションでも思わせぶりなBlipsが公開されてましたし。Windows95はインターネット時代幕開けの象徴みたいなものなので、現代のグローバリズム社会の揶揄として使ってるのでしょうかね。はたまた旧式の無用の長物を表しているのでしょうかね。「偉いやつらがよこすのは、いつだって使えないものなんだ」という意味なんて有り得そうですよね。(いずれにせよ、純粋なリスペクトではないことだけは確かです)


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