深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radiohead・トム・ヨーク・The Smileの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【和訳解説】Weird Fishes/Arpeggi / Radiohead — 心の奥底へと降りていく

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Radioheadの7作目のアルバム『In Rainbows』に収録されている。3本のギターが織り成すアルペジオが絡まりあい、聴く者を心の奥底へといざなっていく。

【和訳】

最も深い海の
その海の底で

君の瞳が
僕を変えていく

なぜ僕はここにいるんだろう?
なぜ僕はここにいるんだろう?

君について行かないなんてできないさ
君の導く先にさ

君の瞳が
僕を変えていく
幻へと変えていく(抜け出すために)
僕は果てまでついていく(抜け出すために)
地球の果てまで(抜け出すために)
そして落ちてしまう

ああ みんな去っていくんだ(抜け出すために)
チャンスをつかんだらさ(抜け出すために)
そしてこれが(抜け出すために)
僕のチャンスなんだ

僕は食べられる 虫たちに
奇妙な魚たちに

僕の身体はついばまれる 虫たちに
奇妙な魚たちに
奇妙な魚たちに
奇妙な魚たちに

ああ 僕は
僕は底へとたどり着く
底へとたどり着き 抜け出す
抜け出す

僕は
僕は底へとたどり着く
底へとたどり着き 抜け出す
抜け出す

【歌詞】

In the deepest ocean
The bottom of the sea
Your eyes
They turn me
Why should I stay here?
Why should I stay?

I'd be crazy not to follow
Follow where you lead
Your eyes
They turn me
Turn me into phantoms (Way out)
I follow to the edge (Way out)
Of the earth (Way out)
And fall off
Yeah, everybody leaves (Way out)
If they get the chance (Way out)
And this (Way out)
Is my chance

I get eaten by the worms
And weird fishes
Picked over by the worms
And weird fishes
Weird fishes
Weird fishes

Yeah, I
I hit the bottom
Hit the bottom and escape
Escape
I
I hit the bottom
Hit the bottom and escape
Escape

【解説】

「Weird Fishes/Arpeggi」は疾走感のあるナンバーですよね。
トムがオーケストラ用に書いた「Arpeggi」が元となっており、様々な楽器がアルペジオを織りなす構成となっていました。『In Rainbows』に収録するにあたり、3本のギターで再構成した楽曲となっています。

「海の底」は「心の奥底」の比喩

さて。歌詞を見ていきましょう。
「海の底」や「奇妙な魚」が印象的なので、海をテーマにした歌なのかと思いますよね。でもこれ実は比喩なんですね。何の比喩なのか? それは「沈み込んだ心」なんです。

最も深い海の
その海の底で

君の瞳が
僕を変えていく

主人公は、光も届かない、暗く沈み込んだ心の底で、一筋の光を見つけるのです。ここでの「君」は恋人とも読めるし、運命や真実、あるいは自分自身の無意識とも読めます。そしてその瞳(光)に強く惹かれ、その力に逆らえなくなる。

I’d be crazy not to follow
(君について行かないなんてできないさ)

この一節には、主人公の藁にも縋る思いが表れています。

安易な希望なんてない

主人公はついていきます。その光に向かって。

君の瞳が
僕を変えていく
幻へと変えていく
僕は果てまでついていく

でもその先にあったのは、安易な希望ではなかったのです。

そして落ちる

ああ みんな去っていくんだ
チャンスをつかんだらさ

導かれるように進んだ先で、主人公はより深く沈んでいくんです。でもみんな順番にいなくなっていく。そうなんです。はじめから、ここには居るべきではなかったのです。そこで主人公は気付きます。

そしてこれが
僕のチャンスなんだ

しかしそう気付いたときに、海の底で主人公は朽ち果てていきます。

僕は食べられる
虫たちに
奇妙な魚たちに

これは一見すると、死のイメージを思い浮かべますよね。海の底で亡者のような生き物たちについばまれて、ばらばらになっていく。

でもこれこそが真の希望だと、トムは歌っているのです。それは古い自分が解体されていくメタファー。感傷も、プライドも、アイデンティティも。海底でばらばらになっていく。すべてが意味を失っていくんです。

すべてを失うことで道が拓ける

この絶望的な状況が、むしろ次に繋がる唯一の道だったのです。

ああ 僕は
僕は底へとたどり着く
底へとたどり着き 抜け出す

このフレーズがこの曲の核心です。
絶望から始まり、仮初の希望に導かれ、より深く落ち込んでしまう。でもここで諦めてはいけない。さらに一度、奥の奥まで沈み切ることで、本当の自由になれる。底に到達した人間には、もう失うものがない。そんなメッセージが込められているのです。

仏教的に読むなら、「自我の死」であり、ニーチェ的に読むなら、「深淵を通過した者の再生」。ユング的に読むなら、「無意識への降下と統合」です。

どの解釈でも共通しているのは、「救いは上からやって来ない。救いはむしろ、一番深い場所まで降りた先にある」。そんなアイロニックな提言なのです。

『In Rainbows』のDisc2には「Down Is New Up」という楽曲もありましたね。この思想は、トム・ヨーク自身の経験からなのか、はたまた彼の信条なのか。

いずれにせよ、彼は決して安易な救いを歌いません。「Weird Fishes/Arpeggi」は、底の底まで沈み切った者だけが見える景色、そんな希望と解放を託した楽曲なのです。

 

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