深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Friend of a Friend / The Smile - 居心地のわるい世界で

The Smileのセカンド・アルバム『Wall Of Eyes』のシングルカット「Friend of a Friend」(フレンド・オブ・ア・フレンド)の和訳と歌詞解説です。

【歌詞】

I can go anywhere that I want
I just gotta turn myself inside out and back to front
With cut out shapes and worn out spaces
Add some sparkles to create the right effect
They're all smiling, so I guess I'll stay
At least 'til the disappointed have eaten themselves away

Buried from the waist down
Stop looking over our shoulder

All the window balconies, they seem so flimsy
As our friends step out to talk and wave and catch a piece of sun

I guess I believe in an altered state
Where they leave their windows and their doors open wide
Here the telephone lines are always busy
Unable to give a reason or a straight answer

Buried from the waist down
Stop looking over our shoulders
We need to get it together

From our window balconies we take a tumble
As our friends step out to talk and wave and catch a piece of sun

All of that money
Where did it go?
Where did it go?
In somebody's pocket
A friend of a friend
All the loose change
Loose change

【和訳】

どこへだって行けるよ 望んだところにさ
自分をひっくり返して 裏を表にすればさ
切り取られた形と 使い古された空間で
きらめきを加えて ぴったりのエフェクトを生み出すんだ
みんな笑っているなら もう少しここにいようかな
少なくとも 失望した人たちがいなくなるまではさ

ぼくらの腰から下は 埋まってて
ねえ ぼくらの肩越しに 見渡すのはやめろよ

すべてのバルコニー それはとてももろく見える
友達が外に出て 話して手を振り 太陽の欠片をつかんでるときにはさ

ぼくは違った状態を 信じているんだと思う
そこではみんなが窓や扉を 大きく開け放ってるんだ
ここでは電話回線は いつもいっぱいだ
理由もはっきりした答えも 与えられることはない

ぼくらの腰から下は 埋まってて
ねえ ぼくらの肩越しに 見渡すのはやめろよ
ああ ぼくらはうまくやらないと

バルコニーから ぼくらは転げ落ちる
友達が外に出て 話して手を振り 太陽の欠片をつかんでるときにさ

すべてのお金
その金はどこに行ったの?
その金はどこに行ったの?
誰かのポケットの中
友達の友達
すべての小銭
小銭

【解説】

MVは盟友ポール・トーマス・アンダーソンによるもの。この楽曲のテーマである「居心地の悪さ」を見事に表現していますね!

今回は短い解説を。
最初の一言目はとてもポジティブですよね。

I can go anywhere that I want

どこへだって行けるよ 望んだところにさ

でもすぐさま、これは皮肉だとわかります。

I just gotta turn myself inside out and back to front

自分をひっくり返して 裏を表にすればさ

1番は周りに合わせようとする主人公の姿が描かれます。ただどうやら、うまく馴染めていない様子です。次の一節なんて思わず情景が浮かんできます。

ぼくらの腰から下は 埋まってて
ぼくらの肩越しに 見渡すのはやめろよ

ここはパーティ会場なのか、自分の出演するライブ会場なのか。少なくともトムは頑張っているのに、友達同士はトムたちをそっちのけで盛り上がっている様子です。知り合いのいないライブとか飲み会とかまさにこんな感じですよね。めちゃくちゃ居心地が悪い。

All the window balconies, they seem so flimsy
As our
friends step out to talk and wave and catch a piece of sun

すべてのバルコニー それはとてももろく見える
友達が外に出て 話して手を振り 太陽の欠片をつかんでるときにはさ

バルコニーって家なのに外じゃないですか。会話も聞こえないし、何してるかもよくわからない。友達に対して疎外感を感じるわけです。

そして2番の冒頭の一節が、この楽曲の核心だと思われます。

I guess I believe in an altered state
Where they leave their windows and their doors open wide
Here the telephone lines are always busy
Unable to give a reason or a straight answer

ぼくは違った状態を 信じているんだと思う
そこではみんなが窓や扉を 大きく開け放ってるんだ
ここでは電話回線は いつもいっぱいだ
理由もはっきりした答えも 与えられることはない

そう、トムはただ単に「家に帰りたい」と思っているわけではないのです。
彼が思い描く理想の世界は「みんなが窓や扉を 大きく開け放ってる」世界なのです。だけど「ここ」はそうではなく、せかせかして落ち着かない世界です。「電話回線」はつながりを強要される現代社会を暗示したものでしょう。とりわけSNSや、ビジネスの世界に巻き込まれるといった意味だと感じます。とにかく「ここ」は理想の世界とは程遠い「はっきりした答え」を得られることのない、うわべの世界というわけです。

そして音楽は徐々に緊張を高め、最後に弾けます。そしてつぶやくような一節。

すべてのお金
その金はどこに行ったの?
その金はどこに行ったの?
誰かのポケットの中
友達の友達
すべての小銭
小銭

いきなり「お金」の話が出てきます。「え、何のお金?」って思いますよね。ぼくも思います。誰かが盗んだわけでもあるまいに? そして気付いたんですが、この「Friend of a Friend」って、パーソナルな歌に見せかけて、めちゃくちゃ資本主義をディスった歌なのかもしれません

歌詞をそのまま受け取るなら、お金は「Friend of a Friend(友達の友達)」のポケットの中にあるのです。そしてこの「友達の友達」がもしかしたら、さきほどの「うわべの世界」の原因なんじゃないでしょうか。

「本当のつながりが実現した世界」を阻害しているのは、資本主義の市場であり、すべてはお金で買えてしまうという皮肉なのです。「友達」が「ぼくら」ではなく「友達の友達」の方に行ってしまうのはこういうわけなのです。ぼくらの求めるつながりは、「友達の友達」が得る「小銭(はした金)」で断たれてしまっているからなのです。

なんて深読みしてみましたが、実際のところどうなんでしょうね。特に意味なんてなく、もっとパーソナルな、デビュー前のステージの思い出とかがモチーフなのかもしれません。
友達の友達と仲良くできる人のコミュニケーションを見習いたいものです。あなたの解釈もぜひ聞かせてくださいね!

以上で、歌詞解説は終わりです。
他にもいろいろな歌詞を解説しています。ぜひご覧ください。
ご意見や応援メッセージもお待ちしています!

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