The Smileのセカンド・アルバム『Wall Of Eyes』の3曲目「Read The Room」(リード・ザ・ルーム)の和訳と歌詞解説です。ちなみに"read the room"は日本語で「空気を読む」という意味。
【歌詞】
And when the time is right
And when the end has come
Maybe you can't, maybe you can't be arsed (Can't be arsed)
For half a million (For half a million)
That's your opinion
That's how your story goes
A magic rain-, a magic rainbow (A magic rainbow)
So big, it bends the light high, high
You know it takes away
It takes the fun out
Maybe I can't, maybe I can't be arsed
This crashing currency
These kind of phone calls (These kind of phone calls)
These candy aerosols
These massive e-, these massive egos
So big, they bend the light high, high
Who knows what it wants from me?
This goes where it wants to be
Honey for the honey bee
But I am gonna count to three
Keep this shit away from me
(Honestly?
Maybe you should read the room
What on earth?
Come on, honey, read the room)
Who knows what it wants from me?
This goes where it wants to be
Honey for the honey bee
But I am gonna count to three
Keep that shit away from me
"Come on out
Come on out
We know
You're in there
We know
You're in there"
Everybody thinks so
Everybody thinks so
Everybody thinks so
【和訳】
しかるべき時が来ても
ついに終わりが訪れても
君はきっと 何もする気にはなれない(する気にはなれない)
50万のためにはさ(50万のために)
それが君の意見
君の物語の流れ
魔法の虹だ(魔法の虹)
それはあまりに大きい 光を高く曲げるほどに
君にはわかる それが奪ってる
楽しさを奪っていると
僕はきっと 何もする気にはなれない
通貨が暴落しても
この手の電話が かかってきても(この手の電話)
キャンディーが チリでできてても
巨大なエゴだ(巨大なエゴ)
それはあまりに大きい 光を高く曲げるほどに
それが何を求めているかなんて わかるもんか
それは行きたいところに 行く
ハチミツは ミツバチのために
なあ 3つ数えるから
こいつをどこかにやってくれよ
(本心なの?
きっと君は 空気を読むべきだ
一体どうしたんだ?
なあ君 空気を読んでくれよ)
それが何を求めているかなんて わかるもんか
それは行きたいところに 行く
ハチミツは ミツバチのために
なあ 3つ数えるから
こいつをどこかにやってくれよ
「出ておいで
出ておいでよ
君がそこにいるのは
わかってるんだ」
みんなそう思ってる
みんなそう思ってる
みんなそう思ってる
【解説】
強大な力と、それにより気力を奪われている人々についての歌のようです。
And when the time is right
Maybe you can't, maybe you can't be arsedしかるべき時が来ても
君はきっと 何もする気にはなれない
この一節は「Teleharmonic」の「Whinng drones(めそめそした 怠け者たち)」への言及に似ています。ただ「Read The Room」では、別の大きな存在が示唆されています。
A magic rain-, a magic rainbow
So big, it bends the light high魔法の虹だ
それはあまりに大きい 光を高く曲げるほどにThese massive e-, these massive egos
So big, they bend the light high巨大なエゴだ
それはあまりに大きい 光を高く曲げるほどに
これらの力の影響で「君」は気力をなくしているようです。
You know it takes away
It takes the fun out君にはわかる
それが楽しさを奪っていると
その大きな存在のせいで「楽しさ」が奪われているのに、それに立ち向かうこともできない状態。まるでジョージ・オーウェルの「1984」の主人公みたいではないですか。
(引用元) ジョージ・オーウェル『1984』あらすじ紹介。現代の監視社会を70年前に予言!? 思想や言論が統制され自由が弾圧された世界 | ダ・ヴィンチWeb
舞台は1950年代の核戦争を経た1984年。世界は物資を浪費するための戦争を繰り返していた。(中略)市民に自由はない。思想・言語・恋愛などあらゆる権利に統制が敷かれ、戦争により物資は常に不足し、プロパガンダを流し続ける、消すことができない双方向テレビ「テレスクリーン」によって、行動のすべてが監視されている。(中略)歴史が絶えず改ざんされるため、オセアニア建国以前の旧体制や建国当時の記録に信憑性はなく、そもそも論理的思考ができないよう洗脳されている市民は、歴史について知ろうとはしない。
ただ、気になる点があります。この大きな存在とは、一体何者なのでしょうか? 「魔法の虹」や「巨大なエゴ」と示されていはいるものの、それらはどこか実体を伴わない存在として描かれているように思われます。そもそも表題の「Read The Room(空気を読む)」というのも、強制力がないのです。むしろそれは同調圧力であり、中央集権的な力が働いているわけではありません。
Who knows what it wants from me?
それが何を求めているかなんて 誰がわかるもんか
「それ」の目的を知る者はだれもいないようです。きっと「それ」とは「全員が空気を読んだ結果生まれた世界」を指しているのです。そこに目的なんてなく、なるべくしてなっている「結果としての世界」です。これは実はとても皮肉なのです。もし「1984」のような中央集権的な世界であれば、(困難を伴うでしょうが、)権力を打倒すれば人々は解放されます。しかしその打倒すべき対象がいない世界では、人々は手を取り合うことができません。何をすれば世界が変わるのか、明確な目標が持てないからです。そうして人々は気力を失っていきます。
And when the time is right
And when the end has come
Maybe you can't, maybe you can't be arsed (Can't be arsed)しかるべき時が来ても
ついに終わりが訪れても
君はきっと 何もする気にはなれない
そんな世界から抜け出すためには、空気を読んでちゃいけないんです。正しいことには正しいと賛同し、間違っていることは間違っていると指摘する。結果的にそれが孤独を生もうが、本当の「楽しさ」を取り戻すには、そうした困難が必要なのです。
Come on out
We know you're in there出ておいでよ
君がそこにいるのはわかってるんだEverybody thinks so
みんなそう思ってる
最後の一節はトムなりに希望を示してくれたのでしょうか。「ぼくも同じように感じてる。君を孤独にはしないよ」というメッセージとして受け取りたいと思います。
さて今回も深読みしてみました。本当のところはどうなんでしょうね。こうした暗示めいた楽曲は、様々な解釈ができるから楽しいですよね。
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