深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞和訳】Traffic / Thom Yorke - 君はこれを自由と呼ぶのかい?

f:id:jellyandbeans:20190701112825p:plain

トム・ヨークの3枚目のソロアルバム『ANIMA』の冒頭を飾るトラック。Netflixで配信された映像作品にも使用されている。 

【歌詞】

Submit
Submerged
No body
No body
It's not good
It's not right
A mirror
A sponge
But you're free

Show me the money
Party with a rich zombie
Suck it in through a straw
Party with a rich zombie
Complains, she stays
In Kensington and Chelsea
And you have to make amends
To make amends to me

I can't breathe
I can't breathe
There's no water
There's no water
A drip feed
Foie gras
A brick wall
A brick wall
But you're free

Show me the money
Party with a rich zombie
Suck it in through a straw
Party with a rich zombie
Yeah, complains, she stays
In Kensington and Chelsea
And you have to make amends
To make amends to me

 

【日本語訳】

服従しろ
最低限の生活をしろ
誰も 誰も
そんなこと望んじゃいない
そんなの正しくない
それは鏡だ
それはスポンジだ
でも君は自由だ

金を見せてくれ
リッチなゾンビがいるパーティ
そいつをストローで吸い上げてやる
リッチなゾンビがいるパーティ
不平をもらしながら
彼女はケンジントン・アンド・チェルシーにとどまる
君は罪を償わなければいけない
ぼくに償わなければいけない

息ができない
息ができない
水がない
水がない
点滴
フォアグラ
レンガの壁
レンガの壁
でも君は自由だ

金を見せてくれ
リッチなゾンビがいるパーティ
そいつをストローで吸い上げてやる
リッチなゾンビがいるパーティ
不平をもらしながら
彼女はケンジントン・アンド・チェルシーにとどまる
君は罪を償わなければいけない
ぼくに償わなければいけない

下線は自信のない部分です

アルバム名と映像作品についてはこちらで解説しています

 【歌詞解説】

人々を追いやる何者かに対する批判のようです。

テーマは「搾取」だと思われます。歌詞を見ていきましょう。

服従しろ
最低限の生活をしろ
誰も
そんなこと望んじゃいない
そんなの正しくない
それは鏡だ
それはスポンジだ

ディストピアな風景から物語は始まります。「鏡」「スポンジ」は中身がないものの象徴です。人々は中身がない生活を強いられている。それなのに・・

でも君は自由だ

とトムが言います。なんという皮肉なのでしょうか!
続いて...

金を見せてくれ
リッチなゾンビがいるパーティ
そいつをストローで吸い上げてやる

「リッチなゾンビ」は、徳を失った金持ち(成金)を揶揄した言葉でしょうか。『Ok Computer』の『Karma Police』みたいな表現ですよね。(最近あまり見ない表現なので...聞き間違いかもしれませんが)

彼女はケンジントン・アンド・チェルシーにとどまる
君は罪を償わなければいけない

ケンジントン・アンド・チェルシーというのはロンドン自治区らしいです。これもやはり「搾取」の象徴として用いられているようです。

イングランドで最も貧しい10%にあたる地域と最も豊かな10%にあたる地域が混在しており、貧富の差が非常に大きい地区でもある

引用)ケンジントン・アンド・チェルシー区 - Wikipedia

極め付けは2番の歌詞ですね。基本的には1番と同じことを言っているのですが・・

息ができない
水がない
点滴
フォアグラ
レンガの壁

人々をガチョウに見立てて、より直接的に表現しています。暗闇のレンガに囲まれ、喉に直接チューブを通されて動くこともままならない生き物。いや・・これを生き物と言って良いものか。
(一応参考リンクを置いておきます)

【閲覧注意】フォアグラの生産方法を知っていますか? 残酷すぎて言葉が出ない・・・ - NAVER まとめ

 

それなのにトムは言います。

でも君は自由だ

これはもはや確信犯です!

見る人から見れば、私たちの生活はきっとこのように見えるのです。でもそれに気付いていない人々は「私たちは自由な社会に生きている」と自信を持って言うのです。しかしそれはきっと作られた自由です。「自由市場」と言う名の搾取社会なのです。

ディストピアなのに、違和感がない・・?

トムは「君はこれを自由と呼ぶのかい?」と皮肉めいて歌います。でもあなたは、もしかしたらすんなり受け入れられてしまったのではないでしょうか。それ自体が恐ろしいですよね。。

事前にトムが「政治的なアルバムなんて作る気はなかったんだけど」みたいなことを言っていましたが、全くいつもと同じですね。安心しました。むしろ彼が政治や社会から離れてアルバムを作ったことなんてあるんでしょうか。(ただしパブロ・ハニーは除く)

(了)

 

<あわせて読むとさらに深読み>

アルバム名と映像作品についてはこちらで解説しています