深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】All I Need / Radiohead - 愛への渇望と葛藤

Radioheadの「All I Need」の和訳、解説です。
7枚目のアルバム『In Rainbows』に収録されています。

【和訳】

ぼくは次の出番を
舞台袖で待っている
ぼくは動物
熱い車中に閉じ込められて
ぼくはどんな日だって
あなたが無視してきた中にいる

あなたは ぼくのすべて
あなたは ぼくのすべて
あなたの情景の真ん中で
ぼくは茂みに横たわっている...

ぼくは蛾だ
あなたの光を求めて飛び回る
ぼくは虫だ
夜から抜け出そうとしている
あなたのそばにいるしかないんだ
ぼくにはほかに何もないから...

あなたは ぼくのすべて
あなたは ぼくのすべて
あなたの情景の真ん中で
ぼくは茂みに横たわっている...

こんなのおかしいよ
おかしいよ...
おかしいよ...
いや これでいいんだ
これでいいんだ...
これでいい...
おかしいよ...
いや これでいいんだ...
これでいい...
これで...

【歌詞】

I'm the next act
Waiting in the wings
I'm an animal
Trapped in your hot car
I am all the days
That you choose to ignore

You are all I need
You're all I need
I'm in the middle of your picture
Lying in the reeds

I am a moth
Who just wants to share your light
I'm just an insect
Trying to get out of the night
I only stick with you
'Cause there are no others

You are all I need
You're all I need
I'm in the middle of your picture
Lying in the reeds

It's all wrong, it's all wrong, it's all wrong
It's all right, it's all right, it's all right
It's all wrong, it's all right
It's all right, it's all right...

 

【解説】

ただ一つの愛を求める、涙ぐましい主人公が描かれています。
歌詞に出てくるメタファーは、すべて弱い立場にいる者を表しています。

  • 出番の来ない役者
  • 熱い車中に閉じ込められた動物
  • 無視された存在
  • 光を求めて飛び回る蛾
  • 夜から抜け出そうとしている虫

そして極めつけはコレ。

あなたのそばにいるしかないんだ
ぼくにはほかに何もないから...

ぼくは完全に「You」に依存しちゃっているんです。そしてそんな状況を否定したくても、心から「You」を求めてしまう。そしてアウトロで、そんな葛藤が限界を迎えてしまいます。

こんなのおかしいよ
おかしいよ...
おかしいよ...
いやこれでいいんだ
これでいいんだ...
これでいい...
おかしいよ...
これでいいんだ...
これでいい...
これで...

破綻した感情に押しつぶされて、楽曲は終焉を迎えます。

 

『All I Need』の深読みポイント

「You」はどれだけ求めても手に入らない存在なんです。もちろんそれは愛する相手なのでしょうが、これは果たして誰なのでしょうか?

トムは一貫して「特定の誰かを歌うことはない」と語っています。(照れ隠しなのか本心なのか)

この「All I Need」も、トムが愛する「誰か」を歌ったものではなく、普遍的な感情としての「愛」を示した楽曲と捉えると、深読みのしがいが出てきます。

圧倒的な弱い立場にいて、絶対的な心の拠り所を求める者。それは例えば、親の愛を求める子かもしれませんし、あるいは神に見放された人間なのかもしれません。

そう捉えると、まるで遠藤周作の『沈黙』みたいじゃありませんか。神に救いを求めても、神は沈黙したまま道を示してくれない。どれだけ期待を裏切られても、それすらも愛する者の意志だと認めるしかないのです。

「All I Need」は、絶対者への愛に縛られる人を描いた、物悲しい一曲なのです。

 

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